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2018-11

この切り株のどちらが南の方角でしょうか? 夏休みの自由研究ネタに

 なぜ、「年輪の広い方が南側」が、ウソ常識なのかがわからない人は、この記事を御参照下さい。数多くのツイートに一つ一つ返答するわけにもいきませんし、15年近くもこんな話を続けてきて、話が広がらなかったので、キツイ表現になっているところもありますが、ご容赦ください。
 ちなみにツイッターの関連記事は総計でインプレッションが100万を超えていますし、エンゲージメントも10万をはるかに超えています。
 更新:平成30年10月29日(月)


ヒマ0026-w512
  
 アクセスが多いので、この記事はこれまで何度も更新しています。記事を追加していったので、つぎはぎになっているところもありますが、最後まで読んでいただければ、内容がよくわかると思います。なお、写真はいずれも平坦なところで撮影したものです。傾斜地ではありません。
 
 上の写真の左上が南です。右下が北です。「木の年輪の広い方が南」というのは間違いです。ガセネタのウソ知識です。この場合、西側が一番広くなっています。このように東西南北の方角と切り株の偏心は関係がありません。

 年輪の幅は「あまり当てにならない」のではなくて、「東西南北の方角とは全く関係が無い」んですよ!!!!!。

 なぜ偏心するのかというと、樹幹の傾き(傾斜)、土地の傾き(傾斜)、樹体の重心の偏り等々です。
 
 ★小学生や中学生の皆さん!

 もし「木の年輪の広い方が南だ」というウソを平気で言う大人がいたら、「あなたは本当に木の切り株を何本か調べたことがあるのですか?」とたずねてみて下さい。
 おそらくその人は黙ってしまうでしょう。

 ネットの掲示板などで、素人が素人にとんちんかんなことを答えていることがありますが、「年輪で東西南北の方角なんかわかりっこありませんよ」という以外は、みんな間違いです。樹木のイロハのイの字がわかっていないのです。Yahooの知恵袋なんか、一番お馬○な回答がベストアンサーになったりしてますからね。

 wikipediaも、「方角だけで決まるものではない」なんて、方角が何らかの形で関与するような、お馬○なことを書いていますね。そうではありません。

 「日当たりの良い南側の木がよく育つからと言って、一本の木の南側がよく育つことにならない」という簡単な理屈が何でわからないんでしょうかね。

D (1)-w480
 2015060417262408a.jpg

 こんな分厚い樹皮で覆われた樹幹のどこに日光が当たろうが当たろうまいが、それが一体、年輪を作る形成層の細胞分裂にどう関係するのでしょうか?

 ましてや東西南北の方角なんて、何の関係も無いことぐらい、すぐにわかりそうなものなのになぁ。

 ネットのリツイートなどで、トンチンカンなことを言う人が増えて、それはそれで「お笑いネタ」としては面白いのですが、やっぱり義務教育で木の成長のメカニズムをきちんと教えていないから、的外れな議論しかできないんでしょうね。

 葉で光合成された養分が内樹皮を通って下に降りてきて、それを使って樹皮と木部の間にある薄い形成層が細胞分裂して、年輪を作りながら外側に木が太っていくわけです。
 ぐねぐねしている樹幹だっていっぱいありますし、水道管のようにまっすぐに栄養が降りてくるわけではないですからね。光が樹幹の南から当たろうが北から当たろうが、年輪のでき方に関係はしないんですよ。


 もちろん木は生き物ですから屈光性やら屈地性やらアテ材やら色々な特性を持っていて、その影響が年輪のでき方に影響してくることもありますが、それはたまたまそうなっているのであって、年輪の広い方が南側だなんてことにはならないのです。

 下の写真はカメラの方角を決めて(つまり平行移動して)何本もの切り株を撮影したものです。写真の左上が南で、右下が北です。一見して分かるように、年輪の広い方向は全くのバラバラです。早い話が、切り株の年輪を見たって東西南北の方角なんか分からないのです。

南北-w440
キャプチャ東西南北-w512

 もちろんこれ以外にも、いくらでも写真はありますよ。例えば、これなんかもそうですけど。

 「年輪の広い方が南側だ」という法則に、こんなにたくさんの例外があっては法則にならないと思いませんか。だから、そんなのは法則でも何でもないんですよ。迷信、うそ常識、都市伝説ですね。

 「広い野原のようなところで孤立した木なら成立するはずだ」なんていう頭の中で思いついただけの理屈を言う人がいますが、そんなの、孤立していようがいまいが同じです。葉っぱで作られた養分が内樹皮を通って下に拡散してきてそれを使って樹皮と木部の間にある形成層が細胞分裂して年輪ができるんですよ。この写真はマツですが、樹幹で光合成しているわけではないことが分かりますよね。

画像1958-v400 

 こちらはスギですが、言わんとしていることが簡単におわかりいただけると思うんですが・・・、いかがでしょうか。

なぜ年輪と東西南北の方角は関係ないのか-v720

 形成層は薄いので目には見えませんが、内樹皮と木部の間にあります。

内樹皮外樹皮-w512

 それと、樹木の樹幹の細胞はほとんど死んでいるというか、空っぽになっていることも義務教育で教えていませんね。生きているのは、木部と樹皮の間にあって細胞分裂する形成層、内樹皮、辺材の柔細胞、わずかこれだけですよ。
 形成層で分裂した木部の細胞は、しばらくすると柔細胞以外はほとんどが死んでしまうんですよ。もちろん空の細胞壁だけは残りますけどね。
 「樹幹全体の細胞が生きている」と勘違いしていることが、年輪と方角とを関係づけたがる原因の一つかもしれません。

 義務教育のみならず、現代の高校の生物教科書には、遺伝子やらバイテクやら難しいことが一杯書いてあるのに、なんでこんな簡単なことが理解されていないのでしょうか。

 状況によって色々ですが、例えば下のような状況で木は育つわけです。こんな状況の中で、日当たりもへったくれも無いと思いませんか。ましてや東西南北の方角なんて・・・。
 
1ャ-w440

 とにもかくにも、年輪幅と方角とは何の関係もないのです。

 ネット上に、思いつきだけの「いい加減な情報」や「珍理論」を書き込んでいる皆さん!

 野原に一本立っている木ならとか、北半球と南半球とか、変な論理を振り回す前に、論理そのものの前提が間違っていないかどうか考え直して下さい。「光合成の理屈から考えて、日当たりの良い方が成長が良い、だから日当たりの良い一本の木の南側の年輪が広くなる」などと思い込んでいませんか。そこの論理の飛躍に気がつけば、珍理論が吹っ飛んでしまうことに気がつくはずです。

 それと、「光の方向に植物が伸びていく」という屈光性の法則と、年輪の肥大成長をゴッチャに考えていませんか。前者は茎の先端の話ですし、後者は樹皮と木部の間に存在する形成層の話です。「茎の先端は光の方向に成長するから、光の当たりやすい南側の年輪が広くなる」なんて理屈がいかに珍理論であるかが分かりますよね。


 いずれにしても、木材の関係者が笑ってしまうような古典的ガセネタを発信するのはもうヤメにしませんか。

 なんとNHKがこんなガセネタを流しているとは知りませんでした。

http://www2.nhk.or.jp/school/movie/clip.cgi?das_id=D0005402780_00000&p=box

 あきれて物が言えません。それに、いつまで経ってもガセネタをながし続けています。

(H29年12月26日追記)
ようやく、NHKからもガセネタが消えました。それにしても、何年間このガセネタを流し続けたんでしょうかね。


 日本山岳会が、お馬○なウソ情報をホームページ上で垂れ流していますが、人命に関わることですから、至急撤去してほしいですね。そんなことを信じていたら遭難者続出ですよ。 親子で一緒に死にたいんでしょうか?
 山岳のプロたちがそんなウソを信じているとは思いたくありませんが、これが現実なんでしょうか。
 
追記:2017/08/16 ようやく、日本山岳会からウソ情報が消えたようです。不満があるのは、「これまでガセネタを流し続けてごめんなさいね。あの情報は間違いでした」という謝罪がないことですね。だって、それを信じ込んでいた人が沢山いるわけだから。


 木造関係では結構有名な建築家が、これまた建築関係では有名な雑誌に「南面で日当たりの良いほうが年輪密度が低く、北面で日影になるほうが年輪密度は高くなる。」なんてお馬○なことを堂々と書いていました。言葉こそ違え、年輪幅の話と全く同じ間違いを犯しているわけです。

 何億年と地球上で生き残ってきた木の成長メカニズムを馬○にしすぎですよ。冒涜していると言っても良いかもしれません。

 161225追記
 なんと、新手のお馬○さんが現れました。「切り株だからわからんのだ、もっと木の上の部分なら南の方が年輪幅が広くなるはずだ」なんて言ってるんですよ。
 それも証拠写真を出すわけではなく、頭の中の凝り固まった理屈だけで考えているから、たちが悪いですね。
 そんなの、どの部分だって同じですよ。
 この写真の場合、西側が広くなっていますよね。
 一目瞭然でしょ。

 木の年輪幅と東西南北の方角とは、何の関係もないのです。

56-v512.jpg

 年輪と方角とは全く関係がないという情報があふれていて、その証拠もいっぱい出ているのに、なぜそんなガセネタをネットに挙げる人がいるのでしょうか。

 間違い知識をずっと中学生に教えてきたので今さら引っ込みが付かなくなってしまった元中学教師とか、お客さんにガセネタを言い続けてきたので、間違いを認めるのが嫌な大工さんとか、これまで色々な人に会いました。一番たちが悪いのは、俺が調べたとき、年輪と方角が一致していた、だから「年輪の広い方が南だ」と強弁する人ですね。

 そんなひとにぴったりのことわざがあります。
 「過ちては改むるに憚ること勿れ 」 
 ごめんね!と言えばいいだけの話ですよ。

 何回もの追記追記で、いつのまにかお○鹿をお馬○と言いすぎました。ごめんなさい。
 まさに 「過ちては改むるに憚ること勿れ 」
  
 それにしても、半世紀近くも昔、学部学生の時に教えてもらった木材学のイロハのイの字のような古典的ガセネタが、ネットでこんなにバズるとは。

 義務教育できちんとした理屈を教えておかないと、その影響がいつまでも残ってしまうということが、今さらながらよくわかりました。

 義務教育に携わっておられる皆さん方にお願いです。せめて5分でも10分でもいいから、木はこのようにして肥大成長するんだという正しい知識を教えてあげてください。若い頃自分がそう教えてもらったからといって、「日当たりの良い南側の木の方が成長が良いから、年輪の幅は南側のほうが広くなる。切り株の年輪を見れば東西南北の方角が分かる」」なんて古典的なガセネタを拡大再生産しないようお願いします。

 ぜひよろしくお願いします。



関連記事

テーマ:博物学・自然・生き物 - ジャンル:学問・文化・芸術

コメント

そうなんですよね。

子供頃、学研か何かで、方位磁石がない時に、南を知る方法で、この切り株の年輪の話を読みました。
が、大人になって、広い原っぱに一本だけあるならともかく、森の中ではそんなことはない、みたいなことを読み、ほぉって思ったことがありました。

お酒の器が好きで、杉のお猪口を探してたどり着きました。

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プロフィール

林知行 

Author:林知行 
 秋田県立大学
 木材高度加工研究所
 所長・教授(農学博士)
 国立研究開発法人森林研究・整備機構フェロー

 京都大学木材研究所(現・生存圏研究所)で大学院修士・博士課程(林産工学専攻)を修了

 「新・今さら人には聞けない木のはなし」が、2018年7月末日に刊行されました。ご注文は直接日刊木材新聞社のホームページからお願いします。簡単に購入できます。
 
 秋田県立大学木材高度加工研究所に異動しました(2013/08/01)。

 プロでも意外に知らない<木の知識>が学芸出版社から刊行されました。上のアンダーラインをクリックしてもらえれば、学芸出版社のホームページにつながります。目次や著者紹介等はそこから参照できます。直販ページやAmazon等へのリンクもそこにあります(2012年9月15日)。

 依頼や問い合わせに関しては、各ページのコメント欄に書き込んでください。私だけに通じます。記事には全く反映されません。(2013/04/01)

 新しいブログをつくるのではなくて、前著のブログの名前を改称して、新たに内容を付け加えることにしました。(2012/09/01)

 以下は前著「今さら人には聞けない木のはなし」の紹介文です。

 日刊木材新聞紙上の連載で話題を呼んだ「今さら人には聞けない木のはなし」が、一冊の単行本として発売されました。ご注文は直接日刊木材新聞社のホームページからお願いします。簡単に購入できます。定価1575円(税込み)です。
 
 「今さら・・」の目次はここへ

 著書のあとがきに書いてありますように、記事にならないまま私のコンピュータの中に眠っている書きかけの記事やメモなどを、一部分だけですが、「ブログ編」として公表することにしました。
 そんなわけで、本人しか意味が分からないところが多くなるかも知れません。

 2012/01/01追記
 販促という本ブログの当初の目的は達成されましたが、リピーターの方もおられますので、これからもネットに出にくい関連雑情報を掲載します。

 「今さら・・」の販売は一般書店のルートにはのりませんので、ご注文は直接日刊木材新聞社からお願いします。Amazon等でも取り扱っていません。
 なお、もしリンクがつながらない場合は「日刊木材新聞社」で検索をお願いします。刊行物のページに注文方法等が掲載されています。

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